喪主として何を話せばいいのか、初めて務める方にとって大きな悩みのひとつが挨拶の言葉です。結論から申し上げると、喪主の挨拶は 1分から2分、300字から500字 を目安に、参列へのお礼・故人の人となりへの感謝・今後のお願いの3点を簡潔に伝えれば十分です。

この記事では次の3つをお伝えします。

  • 通夜・告別式・精進落とし・出棺時の場面別文例(短・標準・長の3パターン)
  • 避けるべき忌み言葉と言い換え表現の一覧
  • 故人との関係性(配偶者・子・親)に応じたアレンジの仕方

喪主の挨拶の基本 — 長さ・タイミング・心構え

喪主の挨拶は、通夜から精進落としまでの葬儀のなかで数回にわたって求められます。はじめて喪主を務める方の多くは「うまく話せるだろうか」と不安を感じますが、完璧に話す必要はありません。大切なのは、参列してくださった方々への感謝の気持ちを、自分の言葉で誠実に伝えることです。

挨拶の長さは1〜2分が目安

喪主の挨拶は1分から2分、文字数にして300字から500字が一般的な目安です。参列者は立ったまま聞いている場面も多く、長すぎる挨拶はかえって負担になります。短くまとめることは、参列者への配慮の表れでもあります。

どうしても伝えたいエピソードがある場合でも、3分を超えないよう心掛けましょう。

挨拶が必要なタイミング

喪主が挨拶を行う主なタイミングは次の通りです。葬儀の形式によっては省略される場合もありますので、事前に葬儀社の担当者と確認しておくと安心です。

紙を読んでも問題ありません

悲しみのなかで挨拶をすることは、心身に大きな負担がかかります。事前に文章を書き、当日は紙を見ながら読んでも失礼にはあたりません。むしろ、きちんと準備をしてきたという誠実さが伝わります。

編集部の見解

長年多くの葬儀を取材してきた立場から申し上げると、参列者の心に残る挨拶は「上手な挨拶」ではなく「正直な挨拶」です。言葉に詰まっても、涙が出ても構いません。故人との思い出をひとつだけ具体的に語ることで、形式的な言葉よりもずっと深く故人を偲ぶ時間になります。

白いゆりと菊が一輪ずつ添えられた、静かな弔いの支度

通夜の挨拶 文例(短・標準・長)

通夜の挨拶は、読経・焼香が終わったあと、通夜振る舞いへご案内する前に行います。告別式よりもやや短めで構いません。ここでは短・標準・長の3パターンをご紹介します。

短めの文例(約1分・300字)

文例 1|短め

本日はお忙しいなか、亡き父・山田太郎の通夜にご参列いただき、誠にありがとうございます。

父は生前、皆さまに大変お世話になりました。家族一同、心より御礼申し上げます。

ささやかではございますが、別室にお食事の用意をいたしております。お時間の許す限り、父を偲びながらお召し上がりいただければと存じます。

本日は誠にありがとうございました。

標準的な文例(約1分半・400字)

文例 2|標準

本日はご多用のところ、亡き父・山田太郎の通夜にお運びいただき、誠にありがとうございます。

父は3月31日、入院先の病院にて、家族に見守られながら静かに息を引き取りました。享年82歳でございました。

生前は皆さま方から温かいお付き合いを賜り、父もさぞ感謝していたことと存じます。遺された家族にとりましても、皆さまのお心遣いが何よりの支えでございます。

別室にて心ばかりの食事をご用意しております。お時間の許すかぎり、父の思い出話などお聞かせいただければ幸いです。

本日は誠にありがとうございました。

長めの文例(約2分・500字)

文例 3|長め

本日はお忙しいなか、また足元の悪いなか、亡き父・山田太郎の通夜にご参列くださり、誠にありがとうございます。

父は長らく糖尿病を患っておりましたが、最期は家族全員に見守られながら、静かに旅立ちました。82年の生涯でございました。

父は口数の少ない人間でしたが、仕事には実直に向き合い、家族には深い愛情を注いでくれました。本日お集まりの皆さまから頂戴した数々のご厚誼は、父にとって何よりの励みであったと、あらためて感じております。

明日の告別式は10時より、こちらの式場にて執り行います。ご都合がつくようでしたら、どうぞお見送りくださいませ。

別室に心ばかりの食事をご用意しております。故人を偲びながら、お時間の許すかぎりお過ごしいただければと存じます。

本日は誠にありがとうございました。

告別式の挨拶 文例

告別式の挨拶は、読経・焼香・お別れの儀が終わり、出棺の直前に行われるのが一般的です。参列者にとっては故人と最後のお別れをする場面であり、喪主の挨拶もより丁寧に、感謝を込めて行います。

出棺時の標準文例(約2分)

文例 4|告別式・出棺時

遺族を代表いたしまして、ひとことご挨拶申し上げます。

本日はご多用のところ、亡き父・山田太郎の葬儀・告別式にご会葬を賜り、誠にありがとうございました。皆さまから頂戴しました数々のお心遣いに、遺族一同、心より御礼申し上げます。

父は昭和19年に生まれ、若くして郷里を出て上京し、長年にわたり建設業に携わってまいりました。仕事一筋の不器用な人間でしたが、家族を第一に考えてくれる、優しい父でございました。

遺された私たち家族は、父の遺志を継ぎ、力を合わせて歩んでまいる所存です。今後とも、故人の生前と変わらぬご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。

本日は誠にありがとうございました。

告別式挨拶に入れたい要素

精進落とし・出棺時の挨拶 文例

精進落としの席では、始まりと終わりの2回、短い挨拶をするのが一般的です。堅苦しくする必要はなく、ゆっくり召し上がっていただくための一言で構いません。

精進落とし 開式の挨拶

文例 5|精進落とし 開式

本日は最後までお見送りいただき、誠にありがとうございました。

ささやかではございますが、精進落としの席を設けさせていただきました。父を偲びながら、お時間の許すかぎりお召し上がりください。

それでは、献杯のご発声を、叔父の山田一郎にお願いいたします。

精進落とし 散会の挨拶

文例 6|精進落とし 散会

皆さま、本日は長時間にわたりまして、誠にありがとうございました。おかげさまで、父を無事に送り出すことができました。

名残は尽きませんが、夜も更けてまいりましたので、このあたりでお開きとさせていただきます。

今後とも、遺された家族にお力添えいただけますと幸いです。本日は誠にありがとうございました。

火葬場への出棺時の短い一言

文例 7|出棺時の短い挨拶

本日はお見送りをいただき、誠にありがとうございます。これより父を火葬場へお送りいたします。皆さまのお心遣いに、遺族一同、深く感謝申し上げます。

障子からやわらかな西日が差し込む、静かな和室の情景

避けるべき忌み言葉と言い換え表現

葬儀の場には、古くから避けるべきとされる「忌み言葉」があります。これは、不幸が重なることや、直接的な死を連想させる表現を避けるための配慮です。知らずに使ってしまっても大きな問題にはなりませんが、事前に知っておくと安心です。

重ね言葉(不幸の繰り返しを連想させる)

重ね言葉の例と言い換え
避けたい言葉 言い換え例
重ね重ね 加えて/深く
たびたび よく/しばしば
ますます さらに/一段と
返す返す 本当に/心より
いよいよ ついに/そろそろ

直接的な死を連想させる言葉

直接的表現と言い換え
避けたい言葉 言い換え例
死ぬ/死亡 逝去/他界/旅立つ
生きていた頃 生前/お元気な頃
急死 急逝
消える/消滅 旅立つ

宗教による違いにも注意

仏教の葬儀では一般的に使われる「冥福」「成仏」「供養」などの言葉は、神道やキリスト教の葬儀では使いません。

故人の宗教・宗派が分からない場合は、「お悔やみ申し上げます」「心よりお悔やみ申し上げます」など、宗教を問わず使える表現を選ぶと安心です。

編集部の見解

忌み言葉を気にしすぎて言葉が詰まってしまう方を何人も見てきました。参列者は言葉尻を厳密に数えているわけではありません。大切なのは気持ちであり、万が一口にしてしまっても、誰も責めません。完璧な形式より、故人への思いを自分の言葉で伝えることのほうが、ずっと心に残ります。

関係性別のアレンジ — 配偶者・子・親

喪主が故人とどのような関係にあるかで、挨拶の呼称や内容は少しずつ変わります。ここでは代表的な3パターンをご紹介します。

配偶者(夫・妻)を亡くした場合

夫を亡くした妻が喪主を務める場合、故人のことは「主人」「夫」「亡き夫」と呼びます。長年連れ添ってきた思い出を語る場面では、感情がこみ上げやすいため、短めにまとめておくと安心です。

文例 8|妻が喪主

本日はお忙しいなか、亡き主人・山田太郎のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。主人は50年にわたり私と家族を支えてくれました。晩年は病と闘いながらも、最後まで家族を気遣う優しい人でございました。残された家族は、主人の分まで力を合わせて歩んでまいります。本日は誠にありがとうございました。

親を亡くし、子が喪主を務める場合

もっとも一般的な喪主のパターンです。故人のことは「父」「母」「亡父」「亡母」と呼びます。参列者に対して話すので、「うちの父」「お父さん」のような家庭内の呼称は避けます。

文例 9|子が喪主(父の葬儀)

本日はご多用のところ、亡き父・山田太郎の葬儀にご会葬賜り、誠にありがとうございます。父は仕事一筋の不器用な人間でしたが、皆さまから頂いた温かいご厚誼に、さぞ感謝していたことと存じます。遺された母と私ども兄弟は、父の遺志を継いで参る所存です。今後とも、変わらぬお付き合いをよろしくお願い申し上げます。

子を亡くし、親が喪主を務める場合

親より先に子どもを見送るという、もっとも辛い立場での挨拶です。無理に長く話す必要はありません。参列への感謝と、故人への短い思いを述べるだけで十分です。

文例 10|親が喪主(子の葬儀)

本日はお忙しいなか、息子・山田一郎のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。親より先に逝ってしまうという、思いもよらないかたちでのお別れとなりました。皆さまから生前賜りましたご厚情に、心より御礼申し上げます。本日は誠にありがとうございました。

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よくある質問

喪主の挨拶は何分くらいが適切ですか?

1分から2分程度、文字数にして300字から500字が目安です。通夜や告別式では参列者が長時間立っている場合も多いため、短くまとめることがかえって丁寧な配慮とされています。長くても3分を超えないようにしましょう。

挨拶の途中で涙が出て話せなくなりそうです。どうすればいいですか?

無理に平静を装う必要はありません。参列者は喪主の悲しみを理解しています。紙を読み上げても失礼にはあたりません。どうしても難しい場合は、葬儀社のスタッフや親族に代読を頼むことも一般的に行われています。

忌み言葉を使ってしまった場合はどうなりますか?

意図せず使ってしまっても、参列者が咎めることはほとんどありません。ただし、事前に文章を書いて読み返しておくことで、重ね言葉や直接的な死の表現を避けやすくなります。紙を用意しておくと安心です。

父が亡くなり、息子の私が喪主です。挨拶で父を何と呼ぶべきですか?

一般的には「父」または「亡父」と呼びます。参列者に対しては「私の父」と言い、名前をフルネームで添えると丁寧です。「お父さん」のような家庭内の呼び方は避けましょう。

家族葬でも喪主の挨拶は必要ですか?

参列者が親族のみの家族葬では、形式ばった挨拶を省略する家庭も増えています。ただし、通夜振る舞いや精進落としの席で一言お礼を述べると、集まった方々への感謝が伝わります。内容も肩肘張らず、自然な言葉で構いません。